楽天グループが金融事業を再編する本当の理由

資産運用・米国株投資

はじめに

4月1日日経新聞から、楽天グループが金融事業(フィンテック事業)の再編を検討しているとの報道がなされました。同報道を受けて同日に、楽天グループ自身からも、「フィンテック事業の再編について検討していることは事実」との発表がありました。

その後、楽天グループからはさらに、「フィンテック事業再編に向けた協議の開始に関するお知らせ」という文書が開示されました。

今回は、楽天グループから発表のあった金融事業再編の内容や、再編を行う理由等について書いてみたいと思います。

楽天グループからの発表内容

現時点で楽天グループから発表のあった内容及び、報道内容等からわかることは、以下の通りです。

「楽天グループ」と「楽天銀行」は4月1日付で、楽天グループのフィンテック事業の再編に向けて協議を開始することについて、基本合意書を締結した。

以下の金融事業6社を再編し、2024年10月を目途に一つのグループに集約する。
 楽天銀行㈱(楽天グループ49%出資)
 楽天カード㈱(楽天グループ100%出資)
 楽天証券ホールディングス㈱(楽天グループ100%出資)
 楽天証券㈱(楽天証券ホールディングス51%・みずほ証券49%出資)
 楽天投信投資顧問㈱(楽天証券ホールディングス100%出資)
 楽天インシュアランスホールディングス㈱(楽天カード100%出資)

※画像は「読売新聞オンライン」より。

再編の目的は、フィンテック事業を運営する各社の連携を促進し、個人及び法人に対してより質の高い金融サービスを提供すること。

「楽天銀行」の株式は、再編後も現在と同じ東証プライム市場に上場されることを想定。

「楽天証券ホールディングス」は上場方針が表明されているが、今回の再編が実施された場合は、上場を行わない可能性がある。

今回の発表に対する私の感想

楽天がモバイル事業に進出して以降、ここ数年の話題は、「いかにしてモバイル事業を黒字化し、軌道に乗せるか」でした。モバイル事業を進める資金調達のために多額の社債を発行し、その償還資金を確保するために、楽天グループの増資や、グループ各社の株式譲渡を行ってきたわけです。

最近はこの話題だけだったといってもよい状況でした。このような中で今回のニュースが出てきたわけですので、私としては、今回の再編も「モバイル事業のための資金調達」と関連した動きであると理解するのが自然だと思います。

今回の件のニュースを見ていると、「フィンテック事業のサービス向上による競争力確保」といった、「前向きな目的」のみが語られているケースが多いですが、私はそういった目的はあくまでも建前であって、真の目的はやはり、これまでと同様、「モバイル事業のための資金調達」であると思えてなりません。

これまではグループ各社の株式譲渡を行うことで、資金調達してきましたが、この方法には限界があります。例えば、楽天証券については、株式譲渡によって、みずほ証券の持ち株比率が既に49%まで上昇してしまっており、これ以上譲渡すれば、みずほ証券に経営権を奪われてしまうことになります。

要するに、資金調達のためにグループ各社の株式譲渡を行えば行うほど、各社に対する持ち株比率が下がり、経営権(支配権)を失うリスクがあります。

モバイル事業は赤字幅は縮小してきているとはいえ、まだまだ資金が必要な状況です。2025年には「4,700億円」もの社債償還も控えています。楽天グループとしては、引き続きグループ各社の株式譲渡での資金調達を考えていると思いますが、現状のままだと、上述の通り経営権を失うリスクがあるため、それを回避する「苦肉の策」として、今回の組織再編の話が出てきたのではないでしょうか?

現時点で、グループ各社の中で、株式譲渡等を行っていない会社としては「楽天カード」があります。具体的な再編内容は不明ですが、組織再編(合併、株式交換、株式移転等)を行うことによって、楽天カードの株式をある程度売却しても、楽天グループとしての支配権を失わないような形を作ろうとしているのではないでしょうか?楽天カードをいずれかの会社と合併させて、その後に一部の株式を売却するといったこともあるかもしれません。

おわりに

今回の再編が、私のような楽天ユーザーにとってメリットがあることなのかは、現時点では何とも言えないと思います。

「楽天モバイルを救済するため」といったネガティブな理由ではなく、前向きな理由で組織再編を行うのであれば、歓迎したいですが、私としては今回の再編は、ネガティブな理由が主目的であるように思えてなりません

三木谷社長は昨年11月の「2023年第3四半期連結決算」発表時に、「楽天グループの金融サービスは統合すれば5兆円の価値があると考えている。5千億〜6千億円の借金は一瞬で返せる」と発言しています。このことも、今回の再編が、資金調達(借金返済)を目的としたものであることを裏付けているように思います。

とはいえ私は、楽天経済圏の住人であり、楽天証券、楽天銀行、楽天カードのいずれについても「ヘビーユーザー」です。楽天グループを応援しています

3月28日に行われた楽天グループの定時株主総会では、社債型種類株式」(議決権や普通株式への転換権がない株式)を発行するための定款変更が承認されたとのことです。「社債型種類株式」の発行も、楽天モバイルのための資金調達の一環だと考えられますが、発行条件次第では私も同株式の購入を検討しようと思っています。その他、ドル建て社債の発行を再度検討しているとの報道もあります。

引き続き、組織再編について新たな情報があれば、ブログ記事にしたいと思います。

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