1億円持っていれば富裕層であるという勘違い

資産運用・米国株投資

はじめに

野村総研が発表している「純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数」という、有名なデータがあります。いわゆる「富裕層ピラミッド」のことです。以下の画像を見たことのある方も、多いのではないでしょうか?(画像は野村総研ニュースリリースより)

私はこの「富裕層ピラミッド」をみていて、長年違和感を感じてきました。今回はこのことについて書いてみたいと思います。

純金融資産1億円は富裕層なのか?

「富裕層ピラミッド」によれば、純金融資産を1億円以上持っていれば、「富裕層」に分類されます。しかし、「1億円」で「富裕層」というのは妥当でしょうか?

結論的に私は、「1億円」程度では「富裕層」からは程遠いと思っています。私自身、「5月4日現在」では「約1億9,695万円」(証券口座の含み益を含む)の純金融資産を保有していますが、自分が富裕層だと思ったことは一度もありません

「1億円」が「富裕層」ではないと思う理由は、以下の通りです。

【純金融資産1億円が富裕層ではないと思う理由】

自分の生活における感覚
「1億円」持っていてもマンションすら買えない事実
昨今の物価上昇
米国では世帯平均純資産額が「1億5千万円」を超えている事実

については、私は毎日の生活において、贅沢なことは全くしていません毎日、節約やポイ活に励んでいます。何かを買う際には、1円でも安くなるように努力しています。私の生活は、富裕層の生活とは程遠いです。

については、2023年度の「東京23区」における新築マンション1戸当たり平均価格は「1億464万円だそうです。平均的なマンションを一括購入したら一文無しになってしまう人が、はたして富裕層でしょうか?

については、昨今の円安の進展や地政学的な問題等により、さまざまな物価が上昇しています。現在でさえ「1億円」程度では贅沢な暮らしができないのですから、今後も物価上昇が続けば、より一層生活は慎ましやかなものになっていくと思います。

については、米国においては、「純資産100万ドル」(約1億5千万円)持っている世帯は「平均的な世帯」でしかありません。詳細は「米国の世帯平均純資産は「1.5億円」を超えているそうです」(過去記事)をご参照ください。

私が考える富裕層ピラミッド

以上を踏まえて、私が考える「富裕層ピラミッド」は、以下の通りです。

【私が考える富裕層ピラミッド】
※金額はいずれも「世帯の純金融資産保有額」を示す(野村総研と同じ)。

超富裕層   :50億円以上
富裕層    :10億円以上50億円未満
準富裕層   :3億円以上10億円未満
アッパーマス層:5,000万円以上3億円未満
マス層    :2,000万円以上5,000万円未満
ローワーマス層:2,000万円未満

本来は、持っている金融資産だけでなく、不動産等についても考慮すべきだと思いますが、もし「純金融資産」だけで判断するとすれば、上記のような「富裕層ピラミッド」が妥当なのではないでしょうか?

この「富裕層ピラミッド」は「生活感覚」を基準にして、階層を分けたつもりです。つまり、同じ階層の人は同じような生活感覚を持っているのではないかとの推測です。例えば、「純金融資産保有額が5,000万円の人」と、「純金融資産保有額が2億円の人」は同じような生活感覚なのではないでしょうか?

この分類の場合、私は「アッパーマス層」になります。マス層やローワーマス層だった頃に比べれば、多少は資金的な余裕がありますが、「富裕」とは程遠い状況です。

「2,000万円未満」として「ローワー(lower)マス層」という階層を新たに設けていますが、これは、いわゆる「老後2,000万円問題」からきています。2,000万円持っていないということは、老後の資金が足りていないということですので、新たな階層として独立させました。なお、「ローワー(lower)」という言葉は、「アッパー(upper)」の反対語として使っているだけで、「劣っている」という意味ではありません

おわりに

「富裕層」という概念が、他人との相対的な比較で決まる側面はあるかもしれません。その意味では、野村総研の「富裕層ピラミッド」が、世帯数を加味したものになっていることは、理にかなっていると思います。野村総研は、「純金融資産保有額」が国内の「上位2%程度」であれば「富裕層」と定義しているわけです。

しかし、もし「1億円」持っていても「富裕層」でないとすれば、それは、「日本で上位2%程度の純金融資産保有額であっても富裕層ではない」ということを意味し、日本人全体が貧しくなってきていることを示しているのかもしれません。

今後さらに円安が進めば、日本人はもっと貧しくなっていく可能性があります。最近では、「インバウン丼」に代表されるような、インバウンド需要を見越した「外国人価格」が話題になっていますが、日本人がそれについていけていないことが、何よりも日本人の貧困化を示しているように思います。

「純金融資産保有額1億円」程度で「富裕層」と定義されてしまう状況そのものが、日本が貧しくなっていることを示しているとも言えるかもしれません。確かに日本国内においては、「1億円」持っていれば、上位2%程度に入れるわけですが、「日本で上位2%程度であること=富裕層」ではありません。この意味で私は、「1億円」程度の資産では、世界的には「アッパーマス層」くらいがせいぜいだと思っています。

野村総研の「富裕層ピラミッド」があまりにも有名になってしまい、あたかも「1億円持っていれば富裕層である」といった誤解を人々に与えてしまっており、ちょっと問題だなと個人的に思います。

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