みずほ証券が楽天証券に追加出資する背景

資産運用・米国株投資

はじめに

11月9日に、みずほ証券が楽天証券に追加出資するとの発表がありました。今回はこのことについて書いてみたいと思います。

今回の発表内容

今回発表された内容は、みずほ証券と楽天証券ホールディングスが、資本業務提携の強化に向けて合意したというものです。具体的には、「12月15日付」でみずほ証券が、楽天証券(楽天証券ホールディングス子会社)の株式の「29.0007%」を「約870億円」で追加取得するものです。

みずほ証券は現在、楽天証券の株式を「19.99%」保有していますので、追加出資により比率が「49%」になります。

楽天証券による上場申請の取り下げ

もともと楽天証券は、「7月4日付」で、楽天証券ホールディングスの東京証券取引所への上場申請を発表していましたが(詳細はこちらをご参照ください)、今回の追加出資の発表において、「上場申請をいったん取り下げる」旨が明記されています。

楽天証券ホールディングスが上場申請していた理由は、楽天モバイルの資金調達目的で発行してきた、巨額の社債償還資金(の一部)を調達するためであったと考えられます。依然として資金調達ニーズがあるにもかかわらず、上場申請を取り下げざるを得なかった背景には、SBI証券による「国内株式売買手数料無料化」の発表が、「8月31日付」であったことが大きく関係しています。

楽天証券ホールディングスは、上場申請に際して、「上場まで」と「上場後」の利益計画を作成していたわけですが、SBI証券による「国内株式売買手数料無料化」の発表で、楽天証券としても手数料無料化に追随せざるを得なくなり、それによって利益計画が大幅な修正を余儀なくされました

8月末の段階で利益計画を修正しなければいけなくなったことで、当初予定していたスケジュールでの株式上場が難しくなったということです。

なお、「楽天証券ホールディングスは引き続き上場方針を維持し、然るべきタイミングにおいて、東京証券取引所に対し上場再申請を行う予定」としています。

SBI証券が8月末のタイミングで、手数料無料化を発表したのは、新NISAに向けた口座獲得が最大の目的であったと思いますが、ひょっとすると、楽天証券ホールディングスの上場申請を妨害することも意図していたのかもしれません。

楽天グループの今後の社債償還予定

日本経済新聞によると、楽天グループの社債償還予定額は、以下の通りとなっています。

特に2024年及び2025年の2年間で、「7,970億円」の償還が控えています。楽天グループの三木谷会長兼社長は、11月9日の決算発表の際、社債償還については、「銀行にコミットメントをもらっているので全く問題はない」と発言しています。

ちなみに、私が150万円分保有している「楽天グループ㈱第22回無担保社債(総額2,500億円)も、償還期限が「2025年2月」となっています。予定通り償還されることを願います。

おわりに ~みずほ証券が楽天証券に追加出資する背景~

2022年11月に、みずほ証券が楽天証券株式の「19.99%」を取得した際の総額は「800億円」です。それに対して、今回「29.01%」を追加取得する総額は「870億円」です。

単純計算すると、今回みずほ証券が追加出資する株価は、2022年11月の株価よりも安いことが分かります。通常、株式上場に向けた資本政策では、時期が後になればなるほど、株価は上昇します。にもかかわらず、株価が安くなっているのは、楽天側がみずほに対して追加出資を要請したからではないかと推測されます。

つまり、楽天としては楽天証券ホールディングスの上場で、社債償還資金(の一部)を賄おうとしていたが、それができなくなったため、急遽、みずほ証券に追加出資を依頼したのではないでしょうか?だからこそ、みずほから足下をみられて、株価が下がっているのだと思います。

みずほから楽天グループに対する貸付金・出資金の合計は「約4,500億円となっており、みずほと楽天グループは運命共同体と言える状況です。

個人的には、みずほ銀行がメインの銀行口座で、みずほ証券口座も持っていますので、みずほと楽天グループが関係を強化すること自体は、前向きにとらえています。

11月9日の楽天グループ決算発表によれば、楽天モバイルは契約者数は伸びてきているものの、依然として巨額の損失を計上している状況です。楽天証券の口座数についても、9月末時点で「968万口座」と、同時点のSBI証券の「1,106万口座」には水をあけられています(詳細はこちらをご参照ください)。

楽天グループは厳しい状況が続くと思いますが、注視しつつ、応援していきたいと考えています。

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