時をかける少女 40周年(追記)

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はじめに

以前、時をかける少女 40周年」という記事を書きました。正確には、本日、「7月16日」が、原田知世さん主演の映画が公開されて、ちょうど40年にあたります。

あらためて、1983年に公開された「時をかける少女」(大林宣彦監督)を鑑賞してみましたので、今の私としての感想を書きます。

本ブログ記事は私の個人的な感想です。若干のネタバレを含みますのでご留意ください。

この映画の素晴らしいところ

映画全体を包み込んでいるノスタルジックで不思議な雰囲気

なんといっても、映画全体から感じられるノスタルジックで不思議な雰囲気が素晴らしいです。

私がこの映画を初めて見たのは、中学生の頃だったと思いますが、中学生だった私も、ノスタルジックな印象を持ちました。

原田知世さんのインタビュー記事を何かで読んだ記憶があるのですが、原田知世さんは、「1983年当時でも、あんな少女はいなかった」と話していました。

つまり、その当時としてもノスタルジックな演出がなされていたということです。中学生だった私が見ても、なにか「古き良き時代」のような、不思議な感覚を抱いたのを覚えています。

尾道と竹原の町並みが、その感覚の土台にあることは、いうまでもありません。

また、この映画では、出演者のセリフが「棒読み」であることが批判されることがあります。しかし私は、この「棒読み」こそが、映画の不思議な感じをより一層強くしている重要な要素だと思っています。

映画全体を彩っている音楽

映画の主題歌である「時をかける少女」(作詞・作曲は松任谷由実さん)はもちろんですが、場面場面で流れる音楽が素晴らしいです。音楽監督は松任谷正隆さんです。

原田知世さんの公式YouTubeチャンネルで、オリジナル・サウンドトラック全編が無料で聞けますので(チャンネル内の「リリース」タブの中にあります)、ぜひ聞いてみてください。

私が特に好きなのは、「愛のためいき」という、大林宣彦監督が作曲した挿入歌です。劇中の重要な場面で、芳山君(原田知世さん)と深町(高柳良一さん)がデュエットする曲です。

歌詞も素晴らしいです(作詞は平田穂生さん)。特に2番の歌詞が、映画の雰囲気とマッチしていると思います。

「愛のためいき」 作詞:平田穂生 作曲:大林宣彦

番】桃栗3年 柿8年 柚子は9年で成下る 梨の馬鹿めが18年

【2番】愛の実りは海の底 空のためいき星屑が ヒトデと出会って億万年

心が救われるカーテンコール

この映画の物語のラストシーンは、切ない感じで終わりますが、その後に、原田知世さんが、共演者に囲まれながら主題歌を歌うシーンが、エンドロールとして使われています。

エンドロールというより、カーテンコールと言ってもいいかもしれません。

ネット情報によると、このカーテンコールは、テレビ放送版では大林監督の意向でカットされていたとのことです。中学生だった私が見たのは、テレビ放送版だったので、このカーテンコールは見ていなかった可能性が高いです。

しかし今回、このシーンを見て、数十年の時を経て、「やっと映画が完結した」との思いを持ちました。このカーテンコールがあるか否かで、映画から受ける印象は変わると思います。

カーテンコールがないと、「切なくてちょっと悲しい感じ」で映画が終わるのですが、カーテンコールがあることによって、「ハッピーエンド」になるのです。

カーテンコールで歌っているのは、「芳山和子」ではなく「原田知世さん自身」なのだと思います。切ないラストで意気消沈している観客が、このカーテンコールのラストで、満面の笑みを浮かべている原田知世さんを見て、「よかったね、知世ちゃん」という気持ちになれるのです。

私は子供はいませんが、この感情は、親が娘に抱く感情に近いのではないかと思っています。

ちなみに、主題歌を作曲した松任谷由実さんが、当時の原田知世さんの声について、「声は細いんですが、気品と存在感が変声期前のピュアーさを醸し出していて、不思議な魅力なんです」と評しているのを、インタビュー記事で読みました。言い得て妙です。

カメラの奥にある優しい眼差し

この映画はもともと、角川春樹さんが、個人的に作りたいと思い、私財を投じて撮った映画なのだそうです。

だからなのか、映画のどのシーンを見ても、カメラの奥にいる、大林監督をはじめとする制作者の温かい眼差しが感じられます。

おわりに

「アイドル映画」と切り捨てられることもありますが、監督、脚本、音楽、出演者等が奇跡のバランスで合わさり、化学反応を起こしてできたのがこの映画です。どの要素が欠けても成り立たなかったという意味で、唯一無二の名作だと個人的には思います。

悲しいわけでもなく、うれしいわけでもないけれど、感情が高ぶって涙が出てくることってありませんか?久しぶりにこの映画を見て、私は、自分が中学生だった頃の何とも言えない、希望や不安の入り混じった感情を思い出し、目頭が熱くなってしまいました。

40周年を迎えた今日、尾道や竹原のロケ地には、きっと往年のファンが訪れているのではないでしょうか。

ロケ地は廃墟化しているとの話も聞きますので、ちょっと心配です。私も、ロケ地がなくなってしまう前に、ぜひ尾道と竹原を訪れたいと思っています

最後に、大林宣彦監督のご冥福をお祈りします

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