楽天グループが金融事業の再編時期を延期する影響

資産運用・米国株投資

はじめに

楽天グループは「今年の4月1日」に、「フィンテック事業再編に向けた協議の開始に関するお知らせ」という文書を開示し、金融事業(フィンテック事業)の再編を検討していることを発表しました。

その時点では、金融事業の再編時期について、「2024年10月」としていたのですが、「7月29日」に「フィンテック事業再編に向けた協議に関するお知らせ」が開示され、「2025年1月」に延期する旨の発表がありました。

今回は、楽天グループが金融事業の再編時期を延期することに関し、私が思うところを書いてみたいと思います。

楽天グループが計画している金融事業再編の内容

今回、金融事業の再編時期が延期されましたが、再編内容(再編の目的や形態等)には変更はないとされています。具体的な再編内容は以下の通りです。

「楽天グループ」と「楽天銀行」は4月1日付で、楽天グループのフィンテック事業の再編に向けて協議を開始することについて、基本合意書を締結した。

以下の金融事業6社を再編し、2024年10月2025年1月を目途に一つのグループに集約する。
楽天銀行㈱(楽天グループ49%出資)
楽天カード㈱(楽天グループ100%出資)
楽天証券ホールディングス㈱(楽天グループ100%出資)
楽天証券㈱(楽天証券ホールディングス51%・みずほ証券49%出資)
楽天投信投資顧問㈱(楽天証券ホールディングス100%出資)
楽天インシュアランスホールディングス㈱(楽天カード100%出資)

※画像は「読売新聞オンライン」より。

再編の目的は、フィンテック事業を運営する各社の連携を促進し、個人及び法人に対してより質の高い金融サービスを提供すること。

「楽天銀行」の株式は、再編後も現在と同じ東証プライム市場に上場されることを想定。

「楽天証券ホールディングス」は上場方針が表明されているが、今回の再編が実施された場合は、上場を行わない可能性がある。

再編時期を延期する理由と影響

再編時期を延期する理由について、楽天グループは、「本再編が楽天グループ及び楽天銀行双方の更なる持続的成長及び企業価値向上に資するかどうかという観点に加え、フィンテック事業の各サービスに係る法規制、楽天銀行の少数株主利益、フィンテック事業のエコシステム強化に最適なグループ・ストラクチャー等の更なる総合的検討が必要と判断したため」としています。

要するに、法規制や、楽天銀行の少数株主利益の保護等、総合的な観点からの検討が必要と判断したため、そのための時間が必要であるということです。

私はそもそも、楽天グループが金融事業を再編する真の目的は、以下の通りであると考えています。

【楽天グループが金融事業を再編する真の目的】
※私の個人的な考え

金融事業を再編する目的:モバイル事業の赤字が続く中、モバイル事業を進めるために発行してきた社債の償還資金を調達するため。

これまではグループ各社の株式譲渡を行うことで、資金調達してきたが、この方法には限界がある。例えば、楽天証券については、株式譲渡によって、みずほ証券の持ち株比率が既に49%まで上昇してしまっており、これ以上譲渡すれば、みずほ証券に経営権を奪われてしまうことになる。

要するに、資金調達のためにグループ各社の株式譲渡を行えば行うほど、各社に対する持ち株比率が下がり、経営権(支配権)を失うリスクがある。

現時点で、グループ各社の中で、株式譲渡等を行っていない会社としては「楽天カード」がある。具体的な再編内容は不明であるが、組織再編(合併、株式交換、株式移転等)を行うことによって、楽天カードの株式をある程度売却しても、楽天グループとしての支配権を失わないような形を作ろうとしているのではないか?楽天カードをいずれかの会社と合併させて、その後に一部の株式を売却するといったこともあるかもしれない。

楽天グループは、2025年には「4,700億円」もの社債償還を控えています。楽天グループとしては、引き続きグループ各社の株式譲渡での資金調達を考えていると思いますが、現状のままだと、上述の通り経営権を失うリスクがあるため、それを回避する「苦肉の策」として、今回の組織再編の話が出てきたのではないでしょうか?

そうだとすれば、再編時期が延期されることによって、社債償還資金の調達時期が遅れるということを意味しています何らかの理由によって、金融事業の再編が困難であり、予定していた形での株式売却による資金調達が難しいということになれば、経営権を失う形での株式売却を行わざるを得なくなる等、楽天グループの経営基盤を揺るがす深刻な問題に発展する可能性があるかもしれません。

おわりに

楽天グループでは、「8月9日」に「2024年度第2四半期決算発表・決算説明会」が行われる予定です。同説明会の中では、モバイル事業の業績見通しに加えて、今後の資金調達計画についても説明されるものと考えられますので、引き続き情報収集していきたいと考えています。

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