はじめに
7月の平日に3泊4日で、両親と旅行に行ってきました。5月以来の旅行になります。前回は「千葉県」に行ったのですが、今回は「群馬県」に行きました。
具体的な行き先は「谷川温泉」です。場所は群馬県北部の水上温泉のすぐ近くになります(画像は「ゆこゆこ」ホームページより)。

3泊とも宿泊先は以下の旅館で、同旅館に宿泊したのは今回が初めてです。
宿泊先:谷川温泉 別邸 仙寿庵
群馬県利根郡みなかみ町谷川614
「別邸 仙寿庵」について

「別邸 仙寿庵」は、1952年から谷川温泉で営業している「旅館たにがわ」の別邸として、1997年に開業した旅館です。
私は以前から「別邸 仙寿庵」の名前は知っていました。会社員時代の出張で頻繁に上越新幹線を利用していましたが、当時、上毛高原駅のホームに看板が出ていて、「雰囲気のよさそうな旅館だなあ」と思ったのが最初です。
旅行サイトで口コミを調べてみると、とても評価の高い旅館で、一度は泊まってみたいと思っていました。過去の旅行の際にも何度か予約を試みたことがあったのですが、いつも宿泊したい日程が満室で、予約が取れませんでした(1泊であれば直前でも予約できるが、3連泊くらいだと予約が取りにくい)。

今回両親と旅行を計画する中で、私が無職になったこともあり、日程に融通がきくようになったことから、「3連泊」を予約することができました。
「別邸 仙寿庵」は「ルレ・エ・シャトー」(RELAIS & CHATEAUX)に加盟していることで有名です。
といいつつ、私は「ルレ・エ・シャトー」が何なのかについて全く知りませんでした。調べてみたところ、「ルレ・エ・シャトー」は、1954年にフランスで発足した非営利会員組織で、世界中の一流ホテル・レストラン580施設(2025年7月現在)で構成されているとのことです。
日本で加盟しているのは、2025年7月時点で20施設で、宿泊施設に限れば12施設のみとなっています。私でも聞いたことのある旅館がいくつか加盟しているので、きっと権威のある組織なのでしょう。
【「ルレ・エ・シャトー」に加盟している日本の宿泊施設】
・伊豆 あさば
・加賀温泉 べにや無何有
・谷川温泉 別邸 仙寿庵
・箱根 強羅花壇
・京都 要庵 西富家
・城崎温泉 西村屋本館
・奈良 登大路ホテル奈良
・霧島温泉 天空の森
・東京 ザ・キタノホテル東京
・沖縄 ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ
・松本 扉温泉 明神館
・大分 ENOWA由布院
「別邸 仙寿庵」は「3階建て・全18室」で構成されています。全室に源泉かけ流しの客室露天風呂が備わっており、谷川岳や谷川の眺望を売りにしています。周囲にはよく整備された広大な庭園が広がっており、自由に散策することができます。
ちなみに、「別邸 仙寿庵」が建てられている土地は、もともとマンション建設用地だったそうです。マンションの建設会社が倒産したことがきっかけで、当旅館経営者が買い取り、今に至っています。このあたりの歴史については、公式ページの「別邸仙寿庵の歴史」に出ています。
客室について
私は今回、いくつか部屋のグレードがあるうちの、「和室B」(最も狭く、最も安価な部屋)に宿泊しました。間取りは、「和室12.5畳+広縁+客室露天風呂」です。
「和室B」は1階~3階に「全6室」あり、私はそのうちの「1階 105号室 あやめ」に宿泊しました。同じ「和室B」でも、間取りこそ同じですが、所在階や位置等により、部屋からの眺めは大きく異なりますし、客室露天風呂の形や大きさにも違いがあります。

↓下の画像の「102 さざんか」「105 あやめ」「202 風月」「205 秋月」「302 淡雪」「305 光雪」が「和室B」で同一価格です。

旅館公式のインスタグラムに、各部屋の客室露天風呂の写真が掲載されていますので(インスタのアカウントがなくても閲覧可能)、希望の部屋があれば事前にリクエストするとよいと思います。ただし、人気の部屋(「和室B」であれば「3階 305号室 光雪」など)はすぐに埋まってしまうようです。
高齢の両親と一緒だったので、客室が1階だったのはよかったと思います。食事会場や大浴場も近いですし、部屋の近くの出口からすぐに庭園に出ることもでき、移動はとても楽でした。ロビーも近いので、思い立ったら気軽に行って、フリードリンクを飲むこともできます。
客室からも、客室露天風呂からも、視界いっぱいに緑が見えるので、とても癒されました。
ただ残念なことに、宿泊した部屋からは、谷川岳や谷川は全く見えませんでした。「和室B」でも、恐らく2階や3階の部屋であれば、谷川(部屋によっては谷川岳も)は見えると思います。
以下の写真は、全て今回撮影したものです。





館内・庭園等について
当旅館は、館内の意匠が凝っていることでも知られています(下の画像は公式ページより)。

特に有名なのは「曲面廊下」です(下は今回撮影した写真)。高さは約8メートルあり、全面ガラス張りで、美しい庭園や、天気が良ければ谷川岳も望めます。

以下は、庭園内等の写真です(今回撮影したもの)。
↓真ん中の山が谷川岳です。

↓手湯もあります。

↓ガーデンテラスにある小屋では自由に果物(今回はブルーベリーでした)を食べたり、飲み物を飲むことができます。


↓川端の平らな場所は瞑想のためのスペースです。

↓庭園の中には「読書ルーム」という小屋があり、自由に本を読んだり、コーヒーを飲むことができます。


↓「読書ルーム」の近くにある有料貸切サウナ(私は利用しませんでした)。目の前(建物の向こう側)に谷川が流れており、川を水風呂として利用できそうです。

食事について
上記の通り、当旅館は「ルレ・エ・シャトー」に加盟しています。私は「ルレ・エ・シャトー」について全く知りませんでしたが、世界中の一流ホテル・レストランが加盟しているとのことでしたので、「きっと食事内容も素晴らしいに違いない」と、行く前からかなり期待が高まっていました。
一方で、旅行サイトの口コミをみると、当旅館の食事について低評価をつけている人が一定数おり、それはそれで不安材料でした。
期待と不安が入りまじる状況で宿泊当日を迎えたわけですが、結論を申し上げますと、食事内容については残念ながら「期待はずれ」でした。

まず、献立が書かれた紙を見た際に、違和感を感じました。通常多くの場合、旅館の献立にはメニューとともに「料理長」の個人名が記載されていますが、当旅館の場合は「別邸 仙寿庵 調理場一同」としか書かれておらず、料理長名が記載されていませんでした。
別に、料理長が誰なのかなどということに関心があるわけではありませんが、料理長名を書くことで、「今回の料理は私が責任を持って調理しています」ということが明示され、ある意味で「責任の所在」が明らかになるのではないでしょうか?
料理長は旅館内で、社長と同等の権力を持っているほど地位の高い人だと思います。そんな料理長が不在(ないし名前が出せない)ということは、責任者が不在ということであり、調理をしている人たちからしても、料理に対して無責任な感じになってしまうのではないでしょうか?

また、今回は3泊したのですが、夕食時のメイン料理が3日とも「増田牛」(群馬県高崎市のブランド牛)でした。連泊して、メイン料理の食材が毎日同じだった経験はこれまでありません。はっきりいって、「手抜き感」を感じてしまいました。「ステーキ」「しゃぶしゃぶ」「胡麻鍋」と、調理方法が違っているとはいえ、毎日「増田牛」がでてきたので、正直なところ2日目の時点で飽きていました。
1日目の夕食のメインのみ、「増田牛」か「海鮮」(たしか海老と鯛)のいずれかを選べたのですが、2日目、3日目も「増田牛」だとは知らなかったので、「増田牛」を選んでしまいました。こんなことなら選ぶタイミングで「2日目と3日目も増田牛です」と教えてもらいたかったです。その他、「舞茸」についても毎回のようにでてきました。
「増田牛」自体はとても柔らかくて、おいしかったですが、何度も出てくると、正直なところ食べるのが苦痛になってきます。本来、旅館での食事は「楽しみなもの」のはずですが、3日目には「今日もまた同じようなメニューなのだろうか」と、ちょっと憂鬱な気分になってしまいました。

食材についても、特に野菜については「筋が残っているような感じ」のもの等もあり、食材の良さもあまり感じられませんでした。また、本来熱い温度で提供されるべき料理や、冷たい温度で提供されるべき料理についても、ぬるい感じの温度で提供されることが多かったように感じました。
その他、食事の際の不手際(白米とおかゆの取り違え、コーヒースプーン置き忘れ、飲み物の注文間違え等)も何度かありました。また、配膳ペースについても、すぐに次の料理を持ってくることもあれば、長い時間待たされたりと、問題があるように感じました。
当旅館はそれなりの価格帯の旅館ですが、価格と食事内容が見合っていないと思います。この食事内容でも「ルレ・エ・シャトー」とやらに加盟できるということなのでしょうか?「この手の認定制度というものは、全くあてにならないな」と、改めて感じました。
(1日目夕食)










(2日目朝食)


(2日目夕食)









(3日目朝食)

(3日目夕食)









(4日目朝食)

良かったところ・悪かったところ
良かった点は以下の通りです。
・客室露天風呂が気持ちよい。
・部屋からの景色が癒される。
・敷地内を散策でき、あえて出かけなくても1日のんびり過ごせる。
・館内の意匠が凝っており、雰囲気がよい。
・寝具が選べたり、夜食やフルーツの提供等、細かな気配りが感じられる。
・チェックイン時間が「13時」と早い。
個人的に客室露天風呂はとても気持ちよかったですが、熱めのお湯が好みの方は、ちょっとぬるいと感じてしまうかもしれません。温度調整は自分では行えず、従業員の方にお願いする必要があります。
なお、客室露天風呂の湯船については、なぜか中途半端に深いため、入りにくい点は要改善項目だと思います(この点は大浴場の露天風呂も同様)。身長約170センチの私が体育座りで湯船に座ると、水面が唇のすぐ下くらいまできてしまいますので、浅いところに腰掛けるか(ただしその場合は肩まで浸かれない)、膝立ちするような形になります。背の低い方であれば、湯船で体育座りすると、息ができないと思います。
寝具については、枕の種類(3種類)・高さ(3種類)・かたさ(2種類)、敷布団のかたさ(2種類)を宿泊者ごとに選ぶことができます。枕が選べる旅館はたまにありますが、敷布団まで選べるのは初めてでした。
チェックイン時間が「13時」というのはとてもよいと思います(チェックアウトは11時)。私は連泊しましたが、1泊でも滞在時間が22時間も取れます。ただ、連泊する宿泊者からすると、他の宿泊客がいなくなって、本当の意味でゆっくりできる時間が「11時~13時」までの2時間しかないのは、かえってデメリットであるともいえるかもしれません。
一方で、悪かった点は以下の通りです。
・食事の内容が価格に見合っていない(上述)。
・同じ部屋プラン(例えば「和室B」)でも、部屋によって眺望や客室露天風呂の大きさ・形等に差がある。
・部屋内の設備が使い古されており、更新が必要と思われるものがある。
・こちらのリクエストがスルーされる場面が複数回あった。
上述の通り、例えば「和室B」の場合は、「全6室」あるのですが、部屋から谷川岳や谷川が見える部屋、見えない部屋、客室露天風呂が広い部屋、狭い部屋と、いろいろあります。これだけ差があっても宿泊代金が同じというのは、人によっては納得できないかもしれません。
ちなみに旅館公式ページの「和室B」の写真には「3階 305号室 光雪」が使われています。他の部屋を割り当てられた宿泊者からすると、「風呂や部屋からの眺めがホームページの写真と全然違うじゃん」という文句が出てもおかしくないと思います。
部屋内の設備については、例えば、洗面所のボウルがひび割れていたり、浴室への扉がガタついていたり、シャワーの蛇口との切り替え部品に不具合があったり(シャワーは、使う都度お湯と水を混ぜて温度調整が必要な旧式)、テレビや金庫が旧式だったり、「そろそろ更新時期が来ているのでは?」という古臭いものが少なくありませんでした。

接客については、基本的には気持ちのよい対応をしていただけました。従業員は日本人、外国人両方いますが、みなさん一生懸命対応されている印象を受けました。ただ、とても忙しいのか、こちらのリクエストがスルーされる場面があったのは残念です。
リクエストのスルーに関して言いますと、楽天トラベルでの予約の段階で、予約フォームに「パンフレットの送付希望があれば記載してください」とあったので、希望する旨記載しましたが、パンフレットが送付されることはありませんでした。
当旅館では、部屋に備え付けられているバスタオルが、デフォルトでは人数分(3人で宿泊した場合は3枚)しかありません。部屋に風呂が付いているような旅館では、一日に何度も入浴することが想定されているので、タオルは多めに置いておいて欲しいです。補充をお願いしたのですが、スルーされたことがありました。
宿泊費用について
今回の宿泊費用は以下の通りです。楽天トラベルで予約しました。
和室B
3名×3泊
※7月の平日に宿泊。
合計料金 :401,400円
クーポン利用:20,070円
差引支払額 :381,330円
楽天ポイント付与:8,665ポイント
楽天ポイントを考慮した実質費用
:372,665円
(1人1泊: 41,407円)
※入湯税及び食事時の飲み物代は別途。
おわりに ~私の総合的な評価~
私の総合的な評価は「100点満点で60点」というところです。期待が大きかっただけに「がっかりした」というのが本音です。40点分のマイナスの大半は食事です。

各旅行サイトの口コミがとても高評価なことや、「ルレ・エ・シャトー」に加盟しているとかで、勝手に期待して盛り上がってしまった分、勝手に落胆しているということかもしれません。
この旅館は、1997年(28年前)の開業当時は、そもそも客室露天風呂を備えた高級路線の旅館は競合も少なかったと思われ、意匠の凝った建物や、広く整備された庭園、谷川岳を望む眺望等、他の旅館と大きく差別化が図られ、時代を1歩も2歩もリードするような旅館だったのだと思います。
ただ、現在は同じような価格帯で、同じような路線の高級旅館は山ほどあり、「仙寿庵ならでは」というポイントがあまり見えませんでした。旅館内の設備等が古くなっているにもかかわらず、更新が遅れている印象も持ちました。

とはいえ、上述の通り、良いところもたくさんあります。雄大な谷川岳を望むロケーションは素晴らしく、とても潜在力のある旅館だと思います。食事面について厳しめに書いてしまいましたが、これは良いところがたくさんあるが故に、食事でマイナスになってしまってはもったいないと思うからです。
現状では特に食事面のマイナスポイントは小さくないですが、食事面が改善され、時宜にかなった設備投資が行われば、かつてのような唯一無二の旅館になれるはずです。
食事が改善されるのを期待して待ち、その暁にはぜひ再訪したいと思います。
※私が過去に宿泊した旅館等については、旅行カテゴリーの各記事をご参照ください。