FIRE後に必要な確定申告③ ~外国税額控除を行うべきか否かのシミュレーション~

FIRE・早期退職

はじめに

私は昨年5月末に、25年間勤務した会社を退職しました。退職後の確定申告については、これまで以下のブログ記事を書いています。

FIRE後に必要な確定申告①
退職後に必要な確定申告の総論について

FIRE後に必要な確定申告②
確定申告に際して準備すべき書類について

私が今年予定している確定申告(令和5年分確定申告)は、以下の通りです。

【私が今年予定している確定申告】

米国ETFからの分配金収入に係る外国税額控除

ふるさと納税に係る寄附金控除

退職に伴う所得税還付(会社員時代に年末調整で行っていた各種控除

これら①②③の全ての確定申告を行うのがよいのか、あるいは一部のみを行うのがよいのかについて、これまで検討してきましたが、この度結論が出ました

なお私は税務の専門家ではありませんので、以下に記載する内容に間違っている点や、漏れている点等があるかもしれませんが、ご了承ください。税務に関しましては、税理士等の専門家にご確認ください。

今回私が確定申告する内容

結論として、今回私が確定申告する内容は、以下の通りとなりました。

「上記①②③の全て」を「総合課税」で確定申告する

上記②③については、確定申告することで、所得が増えることがないため、当初から確定申告をすることが決まっていました。しかし、①(外国税額控除)については、確定申告(総合課税・分離課税)することで、分配金分の所得が増えてしまうため、住民税や国民健康保険料が増加する懸念があり、シミュレーション結果をみた上で、確定申告するか否かを決めようと考えていました。

もともと、昨年の「令和4年分確定申告」までは、所得税の確定申告を行っても、住民税は「申告不要」にできたため、外国税額控除の確定申告を行っても、所得増加による住民税や国民健康保険料への影響を避けることができました私自身も昨年までは、外国税額控除を行った上で、住民税を「申告不要」としてきました。この「住民税申告不要制度」を利用することで、「多くの人が外国税額控除を行った方が税金面でメリットがある」という状況だったわけです。

しかし税制改正により、「住民税申告不要制度」が廃止され、今回の「令和5年分確定申告」からは、所得税と住民税の課税方式を一致させなければならなくなりました。すなわち、外国税額控除の確定申告を行う場合には、総合課税であろうが、分離課税であろうが、分配金分の所得が増加し、住民税や国民健康保険料を増加させてしまう可能性があることになります。

私が行ったシミュレーション結果

私は以下の「3パターン」について、それぞれ「還付額」「住民税」「国民健康保険料」がいくらになるのかをシミュレーションすることにしました。なお、私は税金については素人ですので、シミュレーションは税理士に依頼することにしました。

【私がシミュレーションした3パターン】

パターンA:「上記①②③の全て」を「総合課税」で確定申告するケース

パターンB:「上記①②③の全て」を「分離課税」で確定申告するケース

パターンC:「上記②③のみ」について確定申告するケース(外国税額控除の確定申告を行わないケース)

3パターンのシミュレーション結果以下の通りです。

【パターンA】「還付額495,037円」「住民税157,400円」「国民健康保険料832,566円

【パターンB】「還付額416,033円」「住民税86,700円」「国民健康保険料832,566円

【パターンC】「還付額289,960円」「住民税126,500円」「国民健康保険料522,180円

還付額のうち、外国税額控除のみの還付額は、以下の通りです。

【外国税額控除のみの還付額】

パターンA113,906円

パターンB156,765円

パターンC0円

私は「退職後1年目」の健康保険については、「任意継続」としており、仮に「2年目」も「任意継続」とする場合、その保険料は「年間408,143円(「標準報酬月額300,000円」で「12か月前納」の場合)です。この金額は3パターン全ての国民健康保険料よりも安いため、私の場合は「退職後2年目」は引き続き、任意継続とするのがよいことになります。

私は、もし「退職後2年目」の国民健康保険料が、任意継続保険料よりも安ければ、国民健康保険に切り替えることを検討していたのですが、結果的には確定申告の内容いかんに関わらず、「任意継続」のままとするのがよいことが分かりました。「任意継続」を選択することで、外国税額控除を確定申告する場合の、国民健康保険料への影響を避けることができます

したがいまして私の場合、外国税額控除の確定申告をした方が、税金面で有利なのか否かについては、3パターンの「実質的な還付額」(還付額マイナス住民税額)がいくらになるかで判断すればよいことになります。

3パターンの「実質的な還付額」以下の通りです。

【パターンA還付額495,037円-住民税157,400円=337,637円

【パターンB】還付額416,033円-住民税86,700円=329,333円

【パターンC】還付額289,960円-住民税126,500円=163,460円

「パターンA」の「実質的な還付額」が最も大きいですので、私の場合は、「パターンA」(「上記①②③の全て」を「総合課税」で確定申告するケース)が、最も税金面で有利ということになります。

おわりに

YouTubeで外国税額控除に関する動画をみていると、「米国株から分配金を得ている人は外国税額控除をやらないと損」と断言している動画がありますが、これは正しくないと思います。確かに昨年までであれば、「住民税申告不要制度」が使えたため、外国税額控除を行う方が有利だといえたと思いますが、今年からは、外国税額控除を行うことによる悪影響(住民税や国民健康保険料の増加等)を考慮しないと、外国税額控除を行った方が有利か否かは判断できません特に、分配金収入の多い方や、国民健康保険に加入している方は、私が行ったようなシミュレーションは必須だと思います。

安易に外国税額控除を行うと、一時的に還付金がもらえたとしても、住民税や国民健康保険料の増加により、トータルでは損をするケースが少なくないのではないでしょうか?最も重要な、外国税額控除を行うことのデメリットに言及せず、表面的なe-Taxの入力方法のみを解説しているYouTube動画は、視聴者のミスを誘い、予期せぬ負担増を招くという意味で、無責任だと思います。

仮に今後、私が再就職をせず、収入が分配金収入のみになった場合は、外国税額控除の確定申告を行うことで得られる還付額よりも、確定申告による住民税、国民健康保険料の増加額の方が大きいと考えられますので、来年以降は外国税額控除の確定申告は行わない予定です。来年(退職後3年目)以降は任意継続は選べず、国民健康保険になるため、外国税額控除による国民健康保険料増加の影響が避けられません今後はふるさと納税も行わない予定ですので、私の場合は、「来年以降は一切確定申告をしないのが正解」ということになると思います。

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