はじめに
最近「投資詐欺」という言葉をニュース等で耳にする機会が増えています。「3月7日」には警察庁から「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について」という資料が公表されています。
同資料によりますと、昨年(2023年)一年間の「SNS型投資詐欺」の認知件数は「2,271件」、被害額は「約278億円」となっており、ロマンス詐欺(1,575件・約177億円)と合わせた被害額(455億円)は、オレオレ詐欺等特殊詐欺の被害額(441億円)を上回ったとのことです(画像は同資料より)。
※折れ線グラフ・棒グラフの「青」が「SNS型投資詐欺」、「緑」が「ロマンス詐欺」を示す(左軸:被害額億円、右軸:認知件数)。
被害者が若者から高齢者にシフト
警察庁から発表された資料によりますと、「SNS型投資詐欺」の被害者の性別・年齢層は、以下の通りです。「男性・50代」が最も多いとのことで、まさに私の世代です。
私はたまに、「詐欺撲滅系YouTuber」の動画を見ます。これらの動画では、主に暗号資産投資やアフィリエイト広告等を利用した「ねずみ講」(連鎖販売取引)が取り上げられています。
動画内で、勧誘のためのセミナーにYouTuberが潜入している映像が出てくるのですが、数年前まではセミナー参加者(勧誘される側)は大学生や、社会人になりたての若者(20代~30代)が多い印象でした。しかし最近は、明らかに高齢者(定年退職後の60代~70代くらいの人)が多くなっているように思います。
警察庁がいう「SNS型投資詐欺」と、これらの「ねずみ講」とは、完全に一致するものではないのかもしれませんが、警察庁が発表した資料によれば、「20代・30代」よりも「50代以降」の被害者が多くなっており、YouTube動画の傾向と一致しています。被害者が若者から高齢者にシフトしてきているということなのでしょうか?
どんな人が騙されるのか?
「SNS型投資詐欺」にせよ、「ねずみ講」にせよ、なぜ人は騙されてしまうのでしょうか?これについて私は、「人恋しい人」が騙されているのではないかと思っています。「他人(特に異性)との関り」や「仲間とのコミュニケーション」を求めている人が、騙されているように思います。
「SNS型投資詐欺」の報道内容をみてみると、男性が女性に騙されたり、女性が男性に騙されているケースが少なくないです。有名人の名前を騙った詐欺の場合でも、直接の相手は「有名人のアシスタント」であり、そのアシスタントは異性の設定であることが多いです。「投資」以前の問題として、「異性」と仲良くなりたいと思っている人が、その思いにつけこまれて詐欺に遭っているのではないでしょうか?その意味では「ロマンス詐欺」と根本は同じなのかもしれません。
「ねずみ講」についても、コロナ禍で人との関係が希薄になり、人間関係に飢えている若者が、「同じ夢を追うビジネス仲間」を求めて、ねずみ講に参加してしまい、被害者が加害者になってしまっているのではないでしょうか?被害者が加害者となり、詐欺グループの一員として一緒に活動する中で、仲間意識のようなものが芽生え、それが詐欺を加速させているのかもしれません。
要するに、被害者は「お金が欲しい」という気持ちに加えて、あるいはそれ以上に「他者とコミュニケーションが図りたい」という気持ちによって、被害に遭ってしまっているように思います。その意味では、FIREして人恋しいと思うような人は、詐欺に遭ってしまう可能性が高いのかもしれません。
おわりに
投資詐欺が報道され、SNS界隈で投資詐欺の悪評が広まるにつれて、特にSNSを日常的に利用する若者は、詐欺に引っかかりにくくなることが想定され、詐欺師としても、より情報に疎い高齢者をターゲットにしていくようになるのかもしれません。特に危険なのは、高齢者でSNSを利用している人だと思います。
私自身はこれらの詐欺には引っかからないと思っていますが、「自分は騙されない」と思っている人こそ、案外コロッと騙されてしまうのかもしれません。